はじめに
別の記事で複利の効果の素晴らしさについて説明しました。しかし複利も完全なものではありません。ここでは複利がどのような時に効果を発揮しないのか、またどういう時に効果を最大化できるのかを考えてみます。
複利の計算式のおさらい
まずは複利の計算式を再確認しておきましょう。以下の式で求められるのでした。
A = 利息を含む投資の将来価値
P = 元本投資額(最初の投資額)
r = 年利率
n = 単位tあたりの複利の回数
t = 投資の期間
A = P (1 + r/n)(nt)
将来価値を高めるために
Aが将来の価値なので、これを最大化するためにはどのようにしたらよいのでしょうか?
変えられるのは、P, r, n, tです。1つずつ変えてみて、将来価値がどのように変わるかみてみましょう。
複利の回数
まずはnつまり複利の回数から見てみましょう。
結論からいうと複利の回数はそこまで重要ではありません。
100万円を利率5%で30年間投資するとします。複利の回数が年間に1回(1年間ごとの配当)、2回(半年ごとの配当)、12回(毎月の配当)ではどうかわるのでしょうか。
結果は以下のとおりです。
複利の回数 | 将来価値(A) |
1 | 4,321,942.38 |
2 | 4,399,789.75 |
12 | 4,467,744.31 |
複利が1回と12回では15万円ほどの差がでることがわかりましたが、30年間で15万円の差なのでそこまで気にする必要はないでしょう。なぜこれだけしか変わらないのでしょうか?
A = P (1 + r/n)(nt)
数式をみると、nは2回登場しています。nが大きくなれば、累乗の部分も大きくなるのですが、同時に利息rを割る数も大きくなってしまいます。ですので、結果としてはそこまで差が発生しないというわけです。
元本
元本を増やしたら、将来価値はどのように変わるのでしょうか。元本を増やすことができたら苦労はしないよ、という声が聞こえてきそうですが念のために計算してみます。
元本を利率5%で30年間投資(半年複利)で運用します。
元本投資額(P) | 将来価値(A) | 差額 |
¥100,000 | ¥439,979 | ¥339,979 |
¥1,000,000 | ¥4,399,790 | ¥3,399,790 |
¥10,000,000 | ¥43,997,897 | ¥33,997,897 |
なんだか当然といえば当然の結果となりました。元本が大きいほど、将来価値は大きくなります。具体的には元本が10万円だと33万円ほどしか増えないのに対して、1000万円を投資できれば、3300万円増えます。
元本投資額が、将来価値に及ぼす影響は大きいですが、なかなか簡単に元本投資額を増やすことはできません。
年利率
年利率が違えばどうなるのでしょうか。もちろん利率がいいほうが将来価値は大きくなるに決まっていますが、どれくらいの差が出るかわかりますか。年利率以外の条件は同じにして計算しましょう。(100万円を利率r%で30年間投資(半年複利)で運用)
年利率(r) | 将来価値(A) | 増加額 |
0.001% | ¥1,000,300 | ¥300 |
0.100% | ¥1,030,447 | ¥30,447 |
2.000% | ¥1,816,697 | ¥816,697 |
5.000% | ¥4,399,790 | ¥3,399,790 |
7.000% | ¥7,878,091 | ¥6,878,091 |
驚くほど差がでていることがわかりますね。1番上は銀行の普通預金を想定しています。なんと将来価値は30年で300円増えました。
2番目の0.1%はネット銀行系の預金を想定しています。都市銀行系よりも100倍ほど高いことがありますが、それでも30年で3万円しか増えません。
これが複利の落とし穴です。どれだけ複利がすごいといっても、年利率が低いと十分に効果がでません。
また、2%で運用した場合と5%で運用した場合の差額も想像以上に大きいです。ただし基本的に利率が上がれば上がるほどリスクも高まるのが普通です。30年間常に5%や7%で運用するのは非常に難しいです。できるだけ安全に年利率を高めることが重要になってきます。
投資の期間
最後に投資の期間を変えてみましょう。
条件はこれまでと同じで期間だけを変えます。(100万円を利率5%でt年間(半年複利)で運用)。
期間(t) | 将来価値(A) | 増加額 |
1 | ¥1,050,625 | ¥50,625 |
5 | ¥1,280,085 | ¥280,085 |
10 | ¥1,638,616 | ¥638,616 |
30 | ¥4,399,790 | ¥3,399,790 |
50 | ¥11,813,716 | ¥10,813,716 |
投資の期間は効果が大きいことがわかります。期間が伸びれば伸びるほど計算式のA = P (1 + r/n)(nt)累乗部分がどんどん大きくなるので、将来価値Aもどんどん大きくなります。増やすのが難しい元本投資額に比べて、比較的大来リターンを得る方法をとりやすいといえます。投資を始めるのは早ければ早い方が良いと言われる理由です。
最後に
将来価値に大きく影響を及ぼす要因は、元本、年利率、投資の期間だとわかりました。
とりわけコントロールしやすい投資の期間と年利率は非常に重要です。なるべく早くから、リスクリターンの見合った投資をすることで、複利の効果を最大化することができます。まだ投資を始めていない人は投資を始めてみましょう!